261回例会

日時:12月5日(土)15:00−18:00
会場:慶應義塾大学(三田キャンパス)第一校舎131B
発表:(1)酒井智宏(慶應義塾大学非常勤)
      「意味排除主義とトートロジー」
   (2)石野好一(愛知県立大学)
      「フランス語接続詞の意味とニュアンス」
司会:渡邊淳也(筑波大学)


発表要旨
(1)酒井智宏(慶應義塾大学非常勤)
   「意味排除主義とトートロジー」
本発表の目的は次の三点である。(i) トートロジー(およびその否定である矛盾文)の意味効果がその特殊な字義的意味(自明な命題、無意味な命題etc.)に由来するという先行研究の主張が明白な誤謬に基づいていることを示す。検討の対象とするのは藤田(1998, 1990, 1992)の「トートロジーは自明の理を表すがゆえに説得力を持つ」という主張、および阿部(2009)の「トートロジーは情報量がゼロであるゆえに主観性で満たされる」という主張である。これらの研究は説明能力に大きな違いがあるが(明らかに藤田に軍配が上がる)、いずれも「安定的な字義的意味」の概念に依拠した研究であるという点では共通している。(ii)これらの研究の主張とは逆に、トートロジー・矛盾文は「安定的な字義的意味」なるものが存在しないがゆえに存在しうる現象であることを示し、意味論研究における「文脈主義的転回」とでも呼ぶべき転回の必要性を説く。(iii)文脈主義が再興した今日では、自然言語の意味論研究において何の正当化も行わず「安定的な字義的意味」なるものの上に安住し続けるのは一種の思考停止であることを示し、後期ウィトゲンシュタイン(Wittgenstein 1953, 1958)に起源を持つ「意味排除主義」(Recanati 2004)に基づくトートロジー・矛盾文分析の一端を示す。
(2)石野好一(愛知県立大学)
   「フランス語接続詞の意味とニュアンス」
伝統的にフランス語の接続詞は等位接続詞と従位(従属)接続詞に分類される。等位接続詞の特徴としては、(1)節の倒置は不可能、(2)時制の制約(呼応)が少ない、直説法(または条件法)が普通、(3)代名詞は前方照応が普通、(4)繰り返しは同じ接続詞で行う、などがある。他方、従位(従属)接続詞は、(1)節の倒置可能、(2)時制の制約(呼応)が多い、時制の一致、叙法の呼応がある、(3)代名詞は前方照応、後方照応が可能、(4)繰り返しは(et) queで行なう。ところが、しばしば伝統的な分類特徴とは一致しない用法が見られ、一つの等位(または従位)接続詞でも、用法によっては逆の従位(または等位)的特徴を持つものがある。本発表では、このような接続詞の用法の違いと、その多様性の関係を探り、用法の違いによって意味の違いを説明する可能性を追求したい。

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