259回例会

日時:10月24日(土)15:00−18:00
会場:慶應義塾大学(三田キャンパス)西校舎523B
発表:(1)古賀健太郎(東京外国語大学)
      「特質(クオリア)構造からみるフランス語N+N構造の内部構造」
   (2)大塚陽子(白百合女子大学)
      「フランス語会話の遊戯的側面」 
司会:前島和也(慶應義塾大学)


発表要旨
(1)古賀健太郎(東京外国語大学)
   「特質(クオリア)構造からみるフランス語N+N構造の内部構造」
 本発表では、生成語彙論のなかで提示されている特質(クオリア)構造(Pustejovsky 1995 他)の概念をフランス語のN+N構造の分析に適用する試みを行う。そして、当該形式を話者が実際にどのように理解し、メンタルレキシコンにインプットし、使用しているのかという問題について考察する。まず、N+Nに多様な内部構造があることを、先行研究を概観して確認する。次に、特質構造のモデルについて、その特徴を明らかにした上で、実際にフランス語N+N構造に適用する。そして、N+N構造が成立する条件には構成素の意味特性が大きく関与している点、レキシコン記載の際にはN+Nひとかたまりで記載する必要はないのではないかという点を主張する。
(2)大塚陽子(白百合女子大学)
   「フランス語会話に見られる遊戯的側面」
 フランス語日常会話の特徴の一つとして、しばしば遊戯性(le caractère ludique)が指摘される。Traverso(2004)では、会話を遊戯的と特徴づける要因(言語現象)が提示されているものの、これらの要因がなぜ遊戯性に結びつくのかという点は明らかにされていない。
 本発表では、フランス語話し手の自然会話をコーパスとして、会話を遊戯的と特徴づける言語現象(音韻的、意味的、ディスコース的)の観察結果を報告、これを出発点に会話の遊戯的側面の考察を試みる。とくに、話し手と聞き手の協同作業である会話の”jeu(遊び)”が”jeu(賭け)”としての性質を併せ持つ点に注目し、フェイス理論(Brown & Levinson (1978/1987);Kerbat-Orecchioni(1992)を援用しながら、遊戯的現象がもたらす効果を探る。
Brown P. & Levinson S.C. (1978/1987), Politeness, Cambridge, Cambridge Univversity Press.
Kerbat-Orecchioni C. (1992), Les interactions verbales, t.II, Paris, Armand Colin.
Traverso V. (2004), L’analyse des conversations, Paris, Nathan.

Comments are closed.