Archive for the ‘研究促進プログラム’ Category

第3次研究促進プログラム「指標性の言語学」採択結果

火曜日, 9月 19th, 2023

第3次研究促進プログラム「指標性の言語学」の参加者として決定した方々 (敬称略)、ならびに研究課題は以下のとおりです。

川瀨瑛美 (弘前大学大学院修士課程修了)

時制の照応の例外から考える主観の指標性

川島浩一郎 (福岡大学)

有標の項と無標の項の弁別と指標性

木島愛 (千葉工業大学)

慣用表現の日仏対照における指標性

古賀健太郎 (福岡大学)

Brosse à dentsが歯を磨かなくなった時 ― [N1 + à + N2]型構造におけるステレオタイプに関する考察

牧彩花 (東京外国語大学)

人称表現における複数性と話者の主観性 ― 日仏対照の観点から ―

宮腰駿 (筑波大学大学院博士前期課程)

-ment型副詞単独発話文の発話論的分析

守田貴弘 (京都大学)

直示動詞の指標性 : 指示詞との違いについて

酒井智宏 (早稲田大学)

物理的外在主義と語用論的調整

須藤佳子 (日本大学)

広告言説の脱凝結における指標性

山本大地 (福岡大学)

間投詞と指標性の関係について

第3次研究促進プログラムのご案内

月曜日, 3月 27th, 2023

2023年 3 月 27日

 日本フランス語学会では、2008 年から 2010 年にかけて実施された第 1 次研究促進プログラム「ことばを (で) 遊ぶ」、そして2014年から2016年にかけて実施された第 2 次研究促進プログラム「パロールの言語学」に続く、第 3 次の研究促進プログラムとして、このたび「指標性の言語学」と題して研究グループをつくり、研究会を実施するとともに、論集の刊行を目指すこととなりました。
 以下の趣意をご覧になり、参加を希望される方は、あとの参加者募集要項にしたがって応募してくださいますよう、 お願いいたします。

題目:「指標性の言語学」

趣意:
 20世紀後半に「語用論」と呼ばれるようになる分野の種のほとんどを蒔いたのがフレーゲであることはあまり知られていない。フレーゲは文が表す思想(Gedanke, pensée)は認識主体とは独立に存在すると考えた(Frege 1918-1919)。思想は物理世界とも心的世界とも異なる第三領域に存在し、認識主体によって発見されるのを待っている。思想は真・偽・フィクションのいずれかであり、真なる思想が真と判断され、偽なる思想が偽と判断されることで科学が発展する。フィクションは文学に属し、科学には属さない。真・偽・フィクションのいずれであるかの識別に先立って、思想は把握(fassen)される必要がある。こうしたフレーゲの考え方から、文を理解するとは文が固有にもつ真理条件を理解することに等しいという考え方が出てくる。この図式を受け入れることで成立したのが初期の形式意味論であり、文理解を真理概念に還元することを拒絶することで成立したのが初期の語用論である。かくして、語用論の創始者はバンヴェニストであり、あるいはオースティンであり、フレーゲではない。
 一人称代名詞は、誰がそれを発するかに応じて異なる人を指し、かつそれらの人たちに共通する概念を定義することはできない。arbreが木という概念を表し、その概念にあてはまる個体の集合(すなわち木の集合)を指すのに対して、jeが私という概念を表し、その概念にあてはまる個体の集合(すなわち私の集合)を指すと考えることはできない。この点を捉えてバンヴェニストは、一人称代名詞は概念に対応するものでなければ個体に対応するものでもないと主張した(Benveniste 1958/1966: 261)。バンヴェニストによると、jeはこの語を発する談話行為(acte de discours)を参照し(se référer)、この語を発する者を指し示す。これこそがjeを規定する唯一の方法であり、jeは個々の談話行為という現実(réalité de discours)を離れては存在しえない(Benveniste 1956/1966: 252)。
 だが、フレーゲが主体と切り離されたものとしての思想を確保したのに対して、バンヴェニストは主体と切り離しえないものとしての談話行為を確保したという対立図式は単純にすぎる。フレーゲによると、人物Aが発するJ’ai faimと人物B(≠A)が発するJ’ai faimは異なる思想を表現する。このとき「同じ表現が文脈によって異なる思想を表現する」と考えてはならない。発話状況が異なる以上、二つのJ’ai faimは表現として異なっている。こうしてフレーゲは、素朴に「文脈」と呼ばれるものを「思想の表現(Gedankenausdruck)」に組み込んでいく(Frege 1918-1919: 65)。思想は、把握(fassen)される以前に、表現(ausdrücken)されなければならない。この「表現」は、文の字面を見ただけでは決まらない。いわゆる「表現」と「文脈」は二項対立の関係にはなく、後者が前者の一部を構成するという関係にある。バンヴェニストの功績の一つは、このフレーゲの忘れられた洞察を再発見したことにある。
 フレーゲは思想の表現の構成要素として次のものをあげる。
 1.   発話時点
 2.   発話地点
 3.   発話主体
 4.   指差し、身振り、視線
これらはいずれも今日「指標性(indexicalité)」と呼ばれるものに関係し、それぞれ次の言語現象(のうち特に直示性を帯びたもの)に対応する。
 1’.   時間表現
 2’.   空間表現
 3’.   人称代名詞
 4’.   マルチ・モダリティ
1’-4’を単独で取り出せば統辞論と意味論の研究対象になる。しかし、1’-4’は1-4と独立でなく、1-4は1’-4’を含む文の構成要素であるというのがフレーゲとバンヴェニストの洞察にほかならない。1-4を欠くところに思想の表現はありえない。表現に不可避的に指標性が刻み込まれているとするこの考え方は、言語を(音象徴など少数の例外を除き)もっぱらパースの記号の三分類(アイコン、インデックス、シンボル)におけるシンボルと捉える見方に反省を迫るものであり、生物界におけるコミュニケーションの誕生と人間言語の進化に関わる研究に示唆を与えるほか、言語学においてしばしば提起される「同一の言語表現が複数の意味をもつのはなぜか」という多義性(polysémie)に関する問いの妥当性を再考することを促す。また、哲学においてほぼ定説となっている「同一の心の状態にある二個体が、置かれている環境によって異なる意味/思考を表現しうる」とする意味/思考の外在主義(externalisme)を言語学の視点から捉えなおすためのヒントを与えてくれる。

参考文献
Benveniste, Émile (1956/1966) “La nature des pronoms,” reprinted in
Benveniste (1966), pp. 251-257. 
Benveniste, Émile (1958/1966) “De la subjectivité dans le langage,”
reprinted in Benveniste (1966), pp. 258-266. 
Benveniste, Émile (1966) Problèmes de linguistique générale, Paris :
Gallimard.
Frege, Gottlob (1918-1919) „Der Gedanke: Eine logische Untersuchung“, Beiträge zur Philosophie des deutschen Idealismus 1: 58-77.

<参加者募集要項>
 当該研究促進プログラムへの参加希望者は、氏名、所属、連絡先メールアドレスを明記のうえ、研究題目ならびに研究概要を doc または docx 形式で 1000 字以内 (使用言語は日本語またはフランス語) にまとめ、日本フランス語学会事務局 (メールアドレス:belf-bureau@ml.office.osaka-u.ac.jp) に電子メールの添付ファイルで送ってください。受付期間は 2023年 6 月 1 日から 6 月 30 日 (必着) とします。
 応募資格は日本フランス語学会の会員であることですが、現在会員でない方も、プログラムへの参加 希望と同時に入会手続きを開始してくだされば応募可能です。
 応募者には、2023 年 7 月末までに審査結果を通知します。研究テーマが採用された参加者は、2024 年 9 月末までに、フランス語学会例会、研究促進プログラム主催の研究会、または関連する学会・研究会のいずれかで、プログラム内での研究課題について口頭発表をすることが求められます。また、2025年刊行予定の論集に論文を投稿することができます。論文は、査読により掲載の可否が決定されます。

よびかけ人 : 川島 浩一郎 (福岡大学)
木島 愛 (千葉工業大学)
酒井 智宏 (早稲田大学)
守田 貴弘 (京都大学)

【再掲】フランス語研究促進プログラム

木曜日, 6月 3rd, 2021

日本フランス語学会では会員の皆様の研究企画を募集しています.以下の要領で奮ってご応募くださるよう,お願いいたします.

応 募 規 程

  1. 会員は特定のテーマにもとづいた研究グループを作り,その代表として研究企画書をフランス語学会に提出することができる.
  2. 研究企画のテーマはフランス語学に関連するものとする(他言語との対照研究も含む).
  3. 企画書の分量はA4版で2枚程度とする.企画書には,題目,代表者と企画参加者の氏名と連絡先,企画の具体的な内容説明を記すこと.
  4. 応募者は企画書をメールで事務局(belf-bureau@list.waseda.jp)に添付ファイル(テキストファイルまたはMicrosoft Wordファイル)で提出し,企画の採否について編集委員会の審議を受ける.
  5. 編集委員会が企画を採択した場合,その企画を学会ホームページ(https://www.sjlf.org/)で公表し,さらに参加希望者を募った上で,企画の最終メンバーを確定する.
  6. 企画の成果の本誌への掲載は採択から2年後をめどとする.また分量,形態については,企画代表と編集委員会の合意にもとづいて決定される.企画の規模によっては,別冊による出版も考慮される.
  7. 企画書の締め切りは10月末日とする.

『フランス語学研究』50号別冊論文集『パロールの言語学』目次

水曜日, 6月 1st, 2016

はしがき

論文:

談話マーカー « si vous voulez », « disons » について
―発話の言いかえに関する用法―
安齋 有紀

メトニミ,メタファにおける代置する概念と代置される概念の非弁別化
川島 浩一郎

凝結表現 n’avoir rien à voir に関する考察
木島 愛

複合名詞におけるコネクターとしての spécial に関する考察
古賀 健太郎

初級フランス語学習者における発話能力の特徴
―CEFR-Jに基づくタスク会話と自己評価の分析から―
杉山 香織

Analyse argumentative de l’ironie standard et de l’ironie non-standard
NISHIWAKI Saori

フランス語の使役構文における被使役者の表示:À vs Par
―実例に基づく検証―
藤村 逸子

前置付加形容詞 foutu とその情意的意味
山本 大地

En passant の文法化・語用論化について
渡邊 淳也


編者:大久保朝憲・川島浩一郎・酒井智宏・渡邊淳也

研究促進プログラム「パロールの言語学」大阪大会

木曜日, 12月 24th, 2015

パロールの言語学大阪大会
ワークショップ:言語使用の観察に基づくフランス語研究
Journée d’étude « Etude du français basée sur l’observation des usages réels »
Projet : Linguistique de Parole, Société Japonaise de Linguistique Française

以下の通り、ストラスブール大学教授 Catherine Schnedecker 氏をお迎えし、日本フランス語学会との共催でワークショップを開催いたします。
多数ご参加いただけましたら幸いです。

日時:2016年1月30日(土)13時-17時
会場:大阪大学中之島センター 講義室405

トップページ


発表言語はフランス語です。通訳はありません。

司会:大久保朝憲 Tomonori Okubo (Université Kansai)

プログラム:

13h00: Ouverture
13h05 藤村逸子 Itsuko Fujimura (Université de Nagoya) Caractéristiques de « N1 N2 (épithète) » par rapport à « N1 de N2 »;Effet domino vs Effet de serre, Fin janvier vs Fin de janvier
13h45; 秋廣尚恵 Hisae Akihiro (Université des langues étrangères de Tokyo)
Parce que et la cohésion discursive

pause.
…………………………
14h30 渡邊淳也 Jun-ya Watanabe (Université de Tsukuba) Gérondif non-coréférentiel
15h10 Catherine Schnedecker (Université de Strasbourg)
Je vous le dis très cash : maintenant il faut agir ou comment un adverbe passe de la « banque » à la banlieue et de l’emprunt à la lexicalisation

pause
………………………..
16h00 discussion
17h00 clôture

各発表の要旨を見るには、こちらをクリックしてください

研究促進プログラム「パロールの言語学」第3回研究会@福岡

金曜日, 1月 9th, 2015

研究促進プログラム「パロールの言語学」では、第3回研究会を福岡にて、公開(参加自由・入場無料)で実施することとなりましたので、お知らせいたします。ご都合のつく方はご参会いただければ幸いです。

日時:3月10日(火)13時から17時くらい
場所:福岡大学中央図書館大学院6階「講義室8」
地下鉄七隈線「福大前駅」下車 : 中央図書館の裏手の入り口よりエレベーターをお使いください
http://www.lib.fukuoka-u.ac.jp/access/map/index.php

司会 : 川島浩一郎 (福岡大学)、山本大地 (福岡大学)

プログラム内容 :

日野真樹子 (西南学院大学非常勤;プログラムのメンバーではありませんが、今回は発表者として参加くださることになりました)
「談話マーカーのlàについて」(司会 : 山本大地)

杉山香織 (西南学院大学)
「CEFR準拠の教科書におけるn-gramsの特徴とCEFR-Jの記述文の対応 」(司会 : 川島浩一郎)

山本大地 (福岡大学)
「情意形容詞の情意をめぐって」(司会 : 川島浩一郎)

川島浩一郎 (福岡大学)
「メトニミ,メタファと区別の解消」(司会 : 山本大地)

研究会のあと、懇親会を企画したいと考えております。懇親会に参加してくださる方は、事前にdaichiアットマークfukuoka-u.ac.jpにご連絡をくださると助かります。

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日本フランス語学会研究促進プログラム「パロールの言語学」世話人:
大久保朝憲(関西大学)・川島浩一郎(福岡大学)・酒井智宏(早稲田大学)・渡邊淳也(筑波大学)

研究促進プログラム「パロールの言語学」第2回研究会

金曜日, 1月 9th, 2015

研究促進プログラム「パロールの言語学」では、第2回研究会を公開(参加自由・入場無料)で実施することとなりましたので、お知らせいたします。関心のおありの方は、どなたでもご参会いただければ幸いです。

日時:3月8日(日)14時から17時15分
場所:慶應義塾大学・三田キャンパス・研究室棟1階A会議室
三田キャンパスまでの経路、および構内の地図(研究室棟は地図の【10】):
http://www.keio.ac.jp/ja/access/mita.html

プログラム:
(1)14hー15h
大塚陽子(白百合女子大学)
「フランス語初級テキストにおける応答に関するポライトネス・ストラテジー」
(2)15hー16h
江川記世子(大阪大学非常勤講師)
「単純過去による書き手の事態記述と読み手の解釈」
休憩
(3)16h15ー17h15
秋廣尚恵(東京外国語大学)
「会話コーパスにおける『理由』を表す従属節 car,comme,parce que,puisque」

司会:
(1)・(2)大久保朝憲(関西大学)
(3)酒井智宏(早稲田大学)

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日本フランス語学会研究促進プログラム「パロールの言語学」世話人:
大久保朝憲(関西大学)・川島浩一郎(福岡大学)・酒井智宏(早稲田大学)・渡邊淳也(筑波大学)

研究促進プログラム「パロールの言語学」第1回研究会

日曜日, 11月 23rd, 2014

日本フランス語学会で研究促進プログラム「パロールの言語学」ではこのたび、第1回研究会を公開(参加自由・入場無料)で実施することとなりましたので、お知らせいたします。関心のおありの方は、どなたでもご参会いただければ幸いです。

日時:2014年12月6日(土) 午前10時から12時
場所:早稲田大学文学学術院 (戸山キャンパス) 33号館16階第10会議室

発表者:大久保朝憲(関西大学)
題目:論証的ポリフォニー理論とアイロニー:「ほめごろし」のディスコースをめぐって

発表者:藤村逸子(名古屋大学)
題目:大規模コーパスにおける言語使用(parole)の観察から推測される「フランス語の規範」と「人間の認知傾向」

司会:渡邊淳也(筑波大学)

どうぞよろしくお願いいたします。

日本フランス語学会研究促進プログラム「パロールの言語学」世話人:大久保朝憲(関西大学)・川島浩一郎(福岡大学)・酒井智宏(早稲田大学)・渡邊淳也(筑波大学)

第2次研究促進プログラム「パロールの言語学」採択結果

土曜日, 7月 26th, 2014

第2次研究促進プログラム「パロールの言語学」の参加者として決定した方々(敬称略)、ならびに研究課題は以下のとおりです。今後、参加者間で研究計画の相互批評をおこなったあと、公開の研究会を企画する予定です。


秋廣 尚恵(東京外国語大学)
話し言葉における従続詞の研究

安齋 有紀(島根大学)
自然対話における発話主体間の対話調整

江川 記世子(大阪大学非常勤講師)
現代フランス語における単純過去の観察

藤村 逸子(名古屋大学)
大規模コーパスに基づく名詞と形容詞の使用パターンとその構造化に関する研究

伊藤 達也(名古屋外国語大学)
marqueurs discursifs/particules énonciatives/coordonnants 談話標識の意味論的分類の試み

川島 浩一郎(福岡大学)
メトニミ・メタファと区別の解消

木島 愛(新潟大学非常勤講師)
視覚動詞を用いる定表現に関する研究

古賀 健太郎(東京外国語大学大学院)
ネット社会の現代におけるフランス語複合名詞の形成:[N1 + N2] 型を中心に

近藤  野里(東京外国語大学大学院)
長母音消失と位置の法則の適用範囲の進行

西脇 沙織(EHESS PARIS/CRAL 博士課程)
反語法を用いたアイロニーと誇張法を用いたアイロニー 意味論的ブロック理論による分析

小倉 博行(早稲田大学非常勤講師)
ラテン語の間投詞あるいはそれに準ずる表現の用法について — 歴史語用論的観点から

大久保 朝憲(関西大学)
アイロニーからポライトネス発話へ:意味論・語用論のインターフェイス

大塚 陽子(白百合女子大学)
フランス語初級テキストにおけるポライトネス ―日本語母語話者学習者の認識と理解からみえるもの―

酒井 智宏(早稲田大学)
La dichotomie langue / parole et la modulation pragmatique (ラング/パロールと語用論的調整)

塩田 明子(慶應義塾大学(他)非常勤講師)⇒ 2014年11月4日辞退
発話の流れの一貫性と時制

杉山 香織(西南学院大学)
日本人フランス語学習者による話し言葉の使用語彙の特徴 —タスクに基づくアクティビティの発話データ分析から—

田代 雅幸(筑波大学大学院)
ディアローグにおけるau contraireの論証的な動きについて

渡邊 淳也(筑波大学)
主語不一致ジェロンディフの文法化と熟語的凝結

山本 大地(福岡大学)
情意形容詞、法形容詞とその意味の作用域


第2次研究促進プログラムのご案内

日曜日, 3月 16th, 2014

 日本フランス語学会では、2008年から2010年にかけて実施された第1次研究促進プログラム「ことばを(で)遊ぶ」に続く第2次の研究促進プログラムとして、このたび、「パロールの言語学」と題して研究グループをつくり、研究会を実施するとともに、論集の刊行を目指すこととなりました。以下の趣意をご覧になり、参加ご希望の方は、あとの参加者募集要項にしたがって応募してくださいますよう、お願いいたします。

題目:「パロールの言語学」

趣意:20世紀を通して、言語体系、構造を探求する「ラングの言語学」がとりわけ進展し、多くの成果をあげてきたことはよく知られている。その一方で、1970年代以降は、「ラングの言語学」においては往々にして夾雑物としてうち捨てられてきた、言説のなかでの言語の実現形態の多様性を重視する研究もなされてきた。また、近年さかんになったステレオタイプ理論やコロケーション研究、さらには認知言語学における用法基盤モデルなどの成果を参照するならば、言語は規則にもとづく推論によってではなく、記憶にもとづく模倣によってなりたっていることが理解できる。すなわち、「ラングがパロールとして実現する」というのは、前後関係としては擬制的な理解であって、使用の経験の蓄積のなかにこそラングが見いだされうる、というのが実情である。いま、「パロール」にとりわけ重点をおく研究をさらに推進する価値はますます高まってきていると考える。より具体的にいうと、以下にあげるような領域の研究がかかわってくると思われる。ただし、下記の研究内容は単なる例示であり、実際にはこのわく組みで多様な研究が可能である。

  • 談話分析・テクスト言語学的研究:ディスクール志向の研究、諸言説ジャンルの研究など
  • 会話分析・社会言語学的研究:ポライトネス、社会的直示、対話理論にもとづく研究など
  • 話しことばの研究:談話調整辞、プロゾディー、ジェスチャー、話しことばと書きことばの比較など
  • 発話行為にかかわる研究:発話動詞の研究、発話操作の痕跡としての諸表現の研究など
  • 発話文連鎖の態様とその慣習化にかかわる研究:コロケーション研究、論証理論、ステレオタイプ理論など
  • ラングとパロールの差異と相剋にかかわる研究:音声学と音韻論、語用論と意味論のインターフェイスの研究、ソシュール研究など
  • 歴史的研究:新たな言語慣用が規範化する過程の研究など

<参加者募集要項>
研究促進プログラムへの参加希望者は、氏名、所属、連絡先メールアドレスを明記のうえ、研究題目ならびに研究概要をdocまたはdocx形式で1000字以内(使用言語は日本語またはフランス語)にまとめ、日本フランス語学会事務局(メールアドレス:belf-bureauアットマークcl.aoyama.ac.jp)に電子メールの添付ファイルで送ってください。受付期間は2014年6月1日から6月30日(必着)とします。

応募資格は日本フランス語学会の会員であることですが、現在会員でない方も、プログラムへの参加希望と同時に入会手続きを開始してくだされば応募可能です。

応募者には、2014年7月末までに審査結果を通知します。研究テーマが採用された参加者は、2015年9月末までに、フランス語学会例会、研究促進プログラム主催の研究会、または関連する学会・研究会のいずれかで、プログラム内での研究課題について口頭発表をすることが求められます。また、2016年刊行予定の論集に論文を投稿することができます。論文は査読により掲載の可否が決定されます。

よびかけ人:川島浩一郎(福岡大学)
塩田明子(慶應義塾大学非常勤)
渡邊淳也(筑波大学)